プロテオグリカン IPC 技術者限定資料

プロテオグリカンとは

プロテオグリカンはコアタンパク質にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等のグリコサミノグリカン(以下GAG と表す。)と呼ばれる糖鎖が共有結合した糖タンパク質です(図1)。

細胞外マトリックスの主要構成成分の一つとして皮膚や軟骨など体内に広く分布しています。
GAG鎖は分岐を持たない長い直鎖構造を持ちます。多数の硫酸基とカルボキシル基を持つため負に荷電しており、GAG鎖はその電気的反発力のために延びた形状をとります。また、糖の持つ水親和性により、多量の水を保持することができます(図2)。
プロテオグリカンに含まれる多数のGAG鎖群はスポンジのように水を柔軟に保持しながら、弾性や衝撃への耐性といった軟骨特有の機能を担っているのです。

図1 軟骨組織模式図とプロテオグリカン構造式

一方のコアタンパク質はマトリックス中の様々な分子と結合する性質をもちます。軟骨プロテオグリカンの場合、N末端側にヒアルロン酸やリンクタンパク質との結合領域を持ち、これらの物質と結合したり、同一分子間で会合することもあります。C末端にはレクチン様領域、EGF様領域などを持ち様々な他の分子と結合します(図2)。
この性質により、プロテオグリカンはそれぞれの組織にあった構造を築きます。

図1 軟骨プロテオグリカン模式図

以上のように、軟骨プロテオグリカンはグリコサミノグリカンとコアタンパク質それぞれの性質により、軟骨に特徴的なマトリックスを構築します。プロテオグリカンは組織乾燥重量の約50%を占めており、軟骨の特異機能の担い手となっているのです。

プロテオグリカンはその局在やGAG鎖の種類によって分類されますが、軟骨組織に豊富に存在する巨大プロテオグリカンはアグリカン、基底膜と軟骨に存在するパールカン、皮膚線維芽細胞などに存在するヴァーシカン、デコリンと呼ばれる小型のプロテオグリカンなどが存在しています。
プロテオグリカンはウシ大動脈や肺由来、ブタ肺由来などについて研究が行われていますが、それらは機能や構造に関する内容のもので、多量に調製する方法が求められていました。

基原

プロテオグリカン IPCはサケOncorhynchusketa(Salmonidae)の鼻軟骨から抽出して得られたプロテオグリカンの溶液です。
サケ(鮭)はシロザケ、アキアジとも呼ばれており、太平洋岸では利根川以北、日本海沿岸、北海道、カムチャッカ、北アメリカに分布しています。

日本では北海道、本州北部の川で産卵、孵化し5cmくらいの大きさで川を下り、3-5年間海で過ごした後、生まれた川に溯上し産卵します。産卵期の成魚の全長は平均で70-80cmですが、大きい個体では90cmを超えることもあります。
サケ属で最も大きくなるのはキングサーモンと呼ばれるマスノスケO. tshawytschaで全長150cm、体重60kgという記録もあります。沖合漁業による捕獲が中心ですが、一部の地域では川を上るサケを捕獲しています。


図3 サケ鼻軟骨部位

サケは様々な料理に使われており、軟骨「氷頭」(ひず、ひゅうず)(図3)をはじめ、卵(イクラ・筋子)、腎臓(塩辛)、骨(アラ)などどの部分も捨てずに利用されます。アイヌでは「神がくれた魚」として崇められており、事実上無駄になる部分はない魚ともいえます。

しかし、水産加工品の製造工程においてサケ頭部が廃棄されることも多く、資源の有効利用が求められていました。
そこで、弘前大学生化学第一講座高垣啓一教授と株式会社角弘との共同研究※により、サケ鼻軟骨から高純度かつ大量にプロテオグリカンを精製する技術が確立されました。

一丸ファルコスはこのサケ軟骨由来プロテオグリカンを用いて化粧品原料「プロテオグリカンIPC」として製品化しました。


※ 弘前大学を中心に「文部科学省都市エリア産学官連携促進事業・弘前エリア〈QOL の向上に貢献するプロテオグリカンの応用研究と製品開発〉」を実施(2007-2009)。


コンドロイチン硫酸(標準品)との比較

セルロースアセテート膜電気泳動を用い負電荷度と糖鎖骨格構造の違いによる定性試験を行いました。
標準品として酸性ムコ多糖キット(Cat.No.400610、生化学工業社製)を用いました。
図4 よりプロテオグリカンIPCは、標準品として用いられているコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸などとは異なる成分であることが確認されました。

図4 プロテオグリカン IPCの定性分析
概要

■本質

プロテオグリカンIPCは、サケOncorhynchus keta(Salmonidae)の鼻軟骨から抽出して得られた水溶性プロテオグリカンの溶液です。


■有効性

プロテオグリカンIPCには、以下のような優れた美容効果が認められました。

プロテオグリカンIPCの皮膚への有効性
EGFとプロテオグリカン

EGF(Epidermal Growth Factor)とは「上皮細胞増殖( 成長) 因子」と呼ばれ、細胞の成長と増殖の調整に重要な役割を担っています。

EGFは主に唾液腺にて産生され、唾液中や循環血液中に分泌されます。雄マウス顎下腺EGF含量は性腺発育に伴って増加し、加齢とともに減少することが知られています。 創傷治癒の過程においても、EGFは重要な役割を担っています。顎下腺摘出マウスでは創傷治癒が遅延しますが、EGFを局所または腹腔内投与すると、摘出していないマウスと同程度に治癒がみられたことが報告されています。

ヒトにおいても年齢を重ねるごとにEGF は減少することが判明しており、このため新陳代謝や細胞の再生能力が衰えると考えられます。


図5 プロテオグリカン模式図

EGF様領域がプロテオグリカンのコアタンパク質に存在していることが知られておりますが(図5)、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンにEGF様作用のあることが、弘前大学大学院保健学研究科中村敏也教授により確認されました。

中村教授らはヒト線維芽細胞を用い、細胞増殖促進、マトリックスメタロプロテアーゼの発現・酵素活性及びヒアルロン酸合成酵素の発現を指標としEGF様作用を検討した結果、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンにはヒト線維芽細胞に対してEGF様作用を示すことを確認しています。


なお、EGFには線維芽細胞のヒアルロン酸の合成・沈着を促進することが報告されています。

プロテオグリカンのコアタンパク質部位がEGF様作用を有するのに対し、残りのグリコサミノグリカン部位が保水作用や、EGF様作用だけでは導かれない後述の美容効果に関与するものと考えられます。

つまり、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンにはEGF様作用が期待でき、エイジングケアなどに有望な化粧品原料素材であるといえます。

なお、詳しい規格はこちらをご覧ください。



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